留守を預かるもの・・・・御使い達はそう呼んでいる。
はるか昔から、彼らを見守ってきたのは、人のころ6〜7歳程児童の姿を借りた生き物だった。
いつからそこにいるのかも、性別もわからない、ただ、御使い達は「その御方」のことをよく知っていた。
彼らの考えを「その御方」に話す前に、それらは伝わってしまうのだった。
他の御使い達に幾分傲慢と評価される紅の君でさえ、「その御方」の前に出ると悟られた心の内を
撫でられて恐縮してしまう。
こうして、「その御方」は御使い達の心の幾分かを共有していたが、それを引き出すのは必要のある場合に限られたので、そのことで安心するものもいたし、逆に共有を受けることで安心をする者もいた。
緑青はそのような彼らの世界で、別の意味で最初の存在だった。
せめぎあう2つの意識を統合しあう修練の中で、「その御方」も修練の専念の為にあえて「彼ら」をそっとしておく必要があると考えていた。
紅はそれが気に入らなかった。
けれども、その感情が「修練」にどう結びつくかの口実を思いつきもしなかった。
そこで、そのまとまらない憤りのまま、「御方」の前に出てきた。
「よく来たね。紅。君は僕に語りたいことがあるんだね」
「そうです。だが、貴方の言ういう修練と私のこの感情がどう結びつくか、分からないのです」
「もっともな話だね。でも、その感情をぶつけるエネルギーがあればもっと創造的なことを出来ると思うよ」
「?」
「緑青だけを贔屓してると君が思うのは間違いだよ。僕は彼らのハンディの分、脆弱な部分を、自分で克服できるまで保護しているだけなんだ。同じスタートラインにつけるようにね。君にははそんな必要はないだろう?」
御方はそういうと目の前の水をすくっては球のようにした。
「君には充分力がある。その力をもう少し整理して使えばきっと次なる段階にいけるよ」
「ありがとうございます」